読書事始のこと


 今、私の手元に、シュテファン・ツワィク作、大庭さち子訳、そして挿画辰巳まさ江の「悲しみの王妃」という本があります。以前このブログで書いた私の読書原体験の1冊とも言える児童文学書です。
 あれから図書館スタッフが手を尽くして探して下さった結果、全国で見つかったのは、国立国会図書館所蔵(ただし現在貸出不可)、大阪府立図書館蔵、そして千葉市立図書館蔵の3冊で、拝借したのは千葉市からのものです。待ち望んで届いたは、残念ながら記憶どおりのカバーは付いて無く、頁をめくると紙は黄ばみいかにも古いもので、さらに初版の昭和34年版ではなく版を重ねたものでしたが、まぎれもなく私の愛読書だったものです。 懐かしい物語(歴史)、懐かしい挿絵に母共々まさしく胸キュンものでした。

 図書館という場は、記憶の彼方にあるものをヒョイと呼び覚ましてくれて、このようなまるで個人的な欲求も満たしてくれる宝庫であることを実感しやっぱり利用しない手は無い!と思った次第です。

悲しみの王妃」のマリー・アントワネットは、オーストリア王女として幸せな少女時代をすごし庶民の窮状をまったく想像できない驕慢な女性として成長し政略結婚によりフランス王家に嫁いで贅沢三昧の日々でしたが、やがて虐げられた庶民の怒りがフランス革命へと続き、結果王政が滅びてついには断頭台で果てるのです。最後の時に本来のやさしさと聡明さを取り戻し王妃としての威厳を備えて断頭台に上るというお話です(余談ながら、かって一大ブームとなった宝塚舞台の「ベルバラ」の原作となるものですが、この本をずうっと先に愛読していた私は最後までこのブームには乗れなかったんですよね。学生さんはご存知かしら?)。


国民がパンを求めて暴動を起こした時に、彼女の「パンが無いのならケーキを食べたら良いのに」という有名なセリフがあったとされていますが、まさに他の世界を知らずに育ち想像力の欠如ということがどういう結果をもたらすかを痛烈に物語ってると思います。本を読むことで知らない世界に目を見開かされ想像力も育まれるということは誰も否定できませんよね。断定はできませんが、本を読まない人の視野や心の狭さに心寒くなる思いをさせられることが現実にありますから。
 ですから、学生の皆さん、貴重な気力体力のある青春時代に大いに本を読みましょう!
(ミニカ)