小説の区別 『GOTH 夜の章 僕の章/著・乙一』

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)

『GOTH 夜の章 僕の章』は本格ミステリ大賞受賞作『GOTH リストカット事件』の文庫分冊版です。怖かったり、騙されたり、登場人物を応援したり、精神的に忙しく読んでいました。ミステリなので内容は言えませんが、本当に面白いです。短編集ですから長々とミステリを読むのが嫌いな人でも読めるかと。まあ、有名な作品なのでご存知の方も多いとは思いますが。

ところで、小説にもいろいろと区別がありますよね。純文学、ミステリ、SF、歴史小説、ホラーなどなど、挙げればきりがないほどですが、ではライトノベルというのはどのような印象をお持ちでしょうか。ライトノベルといえば可愛い挿絵や表紙絵があったりして、ともすればオタク向けの小説とも取られかねない扱いである気がします。とはいえ、読書経験の少ない私には定義も意味もよくわからず、とりあえず「挿絵があって、さくさく読める小説」くらいに思っているのですが、実際のところ確固たる「これがライトノベル」みたいな定義はないようです(本当はあるのかもしれませんが)。
さて、なぜそんな話をしたかというと、『GOTH リストカット事件』はもともとはライトノベル雑誌『ザ・スニーカー(角川書店)』に連載されていたものだそうで、ライトノベル仕様だったらしいのです。ただし、発売は一般小説としてだったようですが。
著者、乙一さんは文庫版の『GOTH 僕の章』のあとがきの中で「ライトノベルしか読まない人でもミステリという形式を知って読書の範囲が広がるに違いない」との考えから「ライトノベルでミステリを書けばいいんだ」ということでこの『GOTH』を書き始めたと語っています。しかし、同時に「ライトノベルは眉をひそめられるような存在だった」とも語っており、昔は(今も?)書籍としてのライトノベルが低い扱いであったようなのです。もし、『GOTH』がライトノベルとして発売されていたのなら、本格ミステリ大賞に選ばれていなかったのでしょうか。ライトノベルという体裁だけで扱いが決まるということがあるのなら、なんだか切ないなぁと思うんです。
良いものは何でも良いはずじゃないのか、なんて私は考えてしまうんですけどね。「ライトノベルだ」「一般小説だ」なんて区別したとしても、その境界は曖昧極まりないものですし、どのように出版するかというだけだったり(間違っていたらすいません)、便宜上の分け方ではそうなっているのかもしれませんが、「ライトノベルはちょっと……」みたいに思う人がいるのは何か違うんじゃないのかなぁ、と言いたいわけです。とはいえ、客層など特化した部分を作り出しているのも事実なわけで、書籍の一つの形として必要なポジションとも言えるかもしれません。そう思って納得しようと思うのですが、例えば『ハリー・ポッター』と電撃文庫のSFファンタジーでは、おなじSFなのに何が違うのかな、どう違うのかな、やっぱり評価のされ方が違うよなぁ、などと本気で考える今日この頃です。


というわけで、『GOTH 夜の章 僕の章/著・乙一』を紹介させていただきました。今回も長々と失礼いたしました。
(とある畜大生)