生き方の不平等 : お互いさまの社会に向けて / 白波瀬佐和子(岩波新書)

生き方の不平等――お互いさまの社会に向けて (岩波新書)

生き方の不平等――お互いさまの社会に向けて (岩波新書)

いまの日本社会で実際に選択できる「生き方」には、収入やジェンダー、年齢によって著しい不平等があるのではないか。子ども、若者、勤労者、高齢者というライフステージごとに、その実態と原因について、数々のデータをもとに考察。生き方の不平等をなくしていく道を「お互いさまの社会」の創出に見出してゆく。

 本書は私たちが生きる現代日本社会=格差社会(と言われている社会)での「不平等」に注目し、子供・若者・成人勤労者・高齢者の各層ごとにその現状や実態を考察・分析しています。…と、言うと堅苦しく聞こえますが、実際は豊富なデータや実例を引きながら「何をもって『不平等』とするのか」「その原因は何か」を丁寧に解説しており、私のような社会科学音痴でも興味深く読み進めることができました。
 最終章、この「不平等」を解決するための手段として「敏感な他者感覚」や「社会的想像力」の語が挙げられています(さらに本書ではその具体的・政策的な実現方法としての再分配政策や政府による生活保証機能の実現等に話が発展しています)。「他者を他者とし、当事者でないことの限界を感じつつ、他人事としてではなく、社会の問題をとらえようとすること。これこそが、実はいま、われわれに切に求められている社会的想像力ではないのでしょうか」(p.210)。他人を「勝ち組」と羨んだり「底辺」と蔑むのは簡単です。しかしその前に「お互いさまの社会」の実現、不平等や貧困の解決に向けてちょっと立ち止まって考える、そのきっかけとしてこの本を若い方が読んでくれるといいなと思います。
(○ひら)
※この本は附属図書館 361.8 の棚にあります。