旅立ちの書(沢木耕太郎「深夜特急」)

深夜特急1?香港・マカオ? (新潮文庫)

深夜特急1?香港・マカオ? (新潮文庫)

旅する力―深夜特急ノート

旅する力―深夜特急ノート

 このところ投稿が途絶えてるようなので促す意味も込めて、駄文ですが懲りずになつかしの本について書きます。

 沢木耕太郎については、初めて読んだ「バーボンストリート」というエッセイがとてもおもしろかったので、その後出版された深夜特急の第一版からワクワクしながら読み始めたのはもう何十年前になるのでしょう。本人の爽やかな風貌(?)と期待通りの内容に、どっぷりと沢木ワールドにハマってしまい、いつも次号の出版を心待ちにして読んだものです。 インドまでのフライトのストップオーバーで滞在した香港を皮切りとした大陸横断記は、まるで自分が旅してるような生き生きとした流れで旅の光と影が描かれていました。その後初めての我が香港旅行のおりに、本の印象がまだ十分胸に留まったままだったので少しでも沢木の追経験をしたいと思い、通常の観光コースをひとりはずれて、人々の通勤の足でもあるスターフェリーに乗船してみました。たった15分足らずのミニジャーニーながら香港の大勢の通勤客にまぎれ、今沢木と同じ体験をしてるんだと秘かに深く感動したこと、それと蛇足ですが、映画「慕情」のテーマソング「Love is A Many-Splendored Thing」を脳内に鳴り響かせながらヴィクトリアピークに登ったこと、そして赤い2階建てバスで風を切り胸ときめかせながら市内を回ったことエトセトラ、etc.、がなつかしく思い出されます。

 今は望めば誰でも手軽に海外へ行ける時代となり、当時を振り返るとまことに初々しい思い出ですが、印象深い読書等によってその追体験をしたいと思えるような、そんな本に出会えたのは幸運と言えるのではないでしょうか。皆さんにも、そういった心や記憶に残る本とぜひ出会ってほしいものです。この図書が折にふれ誰かさんに読まれてるのを知る都度、一人悦に入ってます(読後の感想をまた投稿頂けたら推薦者としては嬉しい限りです)。
 最近、図らずも図書館書庫で「旅する力:深夜特急ノート」なる本(2008年出版)を見つけ、もちろん即借り出して大陸横断の旅再びという思いと謎が解きほぐされるような気持ちを味わいました。

 おりしも3月旅立ちの時です。共に携えられる書があれば、卒業生の方々は未知の世界に踏み出す時に少しは勇気が持てるのではないかしら、と祈るばかりです(付則ですが、月刊「新潮」で沢木がまた連続ものエッセイを書きだしたのを偶然見つけました。彼もとうに不惑の世代となってもうあの颯爽とした印象は失せた感が無きにしも非ずですが、円熟味が加わった味わい深いものを期待してるところです)。
(ミニカ)

※「深夜特急」全6冊は図書館文庫コーナー新潮文庫」の915.6にあります。
 また、「旅する力」は附属図書館915.6の棚にあります。
 「915.6」の棚には他にも紀行文・旅行記が並んでいますのでチェックしてみてください。